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墨出しには資格が必要?使用する工具から作業の流れまでを詳しく解説

2024/03/29

「墨出し」とは、建設業における基本的な工程ですが、後の工程に大きな影響を与える大変重要な作業です。
墨出しとはどのような作業を行い、どのような工具を使い、そのように作業を進めるのでしょうか。

この記事では墨出しの概要や作業手順などを解説します。
建設業界で働く方や、これから建設業をめざす人はぜひご参考にしてください。

墨出しには資格が必要?使用する工具から作業の流れまでを詳しく解説

墨出しとは

リフォーム、リノベーションなどをする際、建物の床や壁などに目印を設けることがあります。この作業が「墨出し」です。
壁や床などは定規やメジャーを使ってサイズを計るには大きすぎます。
また、図面と同じサイズで仕上げるために目印を付けることもできません。

そこで、スピーディーかつ効率的にサイズを測ったり、目印を付けたりするために、「墨つぼ」を使って墨出しが行われます。
内装材の設置や建具の設置などの際、墨出し職人が墨つぼから取り出した糸をしっかりと張り、その糸を指で弾いて、床や天井などに墨で目印を付けます。

このように墨出しは、建設を行う際に非常に重要な作業です。

3つの墨出し作業

墨出しにもいろいろな種類があります。
主な「墨出し」をご紹介しましょう。

種類 特徴
陸墨 壁面が対象で水平を出すために用いられる
芯墨 柱や壁の中心となる位置に印を付けるために用いられる
返り墨(逃げ墨) 障害物を避け、本来墨を出すべき場所とは異なる場所に目印をつけるために用いられます。

障害物を避け、本来墨を出すべき場所とは異なる場所に目印をつけるために用いられます。

墨出し職人に必要な資格

特に必要となる資格はありません。
誰でも希望すれば、未経験の人でも墨出し職人を目指すことが可能です。
求人サイトなどをチェックし、墨出し職人の募集がある会社へ就職し、見習い社員から開始となります。

墨出しは先輩の職人と2人で作業することが多いので、コミュニケーション能力も必要です。経験を積み重ねながら技術を習得していきましょう。

12の墨出しに必要な工具

実際に現場で墨出しをするときに使用する道具をご説明します。

NO. 工具名 概要・用途
1 墨つぼ 古くから使われており、中に墨が入ったつぼのような形をしている。
墨のついた糸を伸ばして、目印を付けたい場所に糸を張り、指で糸を弾いて真っすぐな線を引く。
2 墨差し 短い直線を引く場合に使用。
竹製で、一方がヘラ状の先端になっており、もう一方がペン状の先端をしている。
特に垂直や水平を出したい場合の線を引くのに用いられる。
3 水糸 墨つぼなどに採用される糸。
ピアノ線、ナイロン製、ポリエチレン製などがある。
非常に頑丈で耐久性が高く、墨出しなどに使用される。
4 測量用チョークライン(画線器) 垂直や水平を出したり、寸法を明示したりする場合に使用。
チョークなので、布や手で簡単に消すことができる。墨つぼと測量用チョークラインを併用するケースがほとんど。
5 糸巻き 線引き用の糸を巻き取るための工具。
6 下げ振り器 垂直を確認するための工具で、円錐形の先端におもりをぶら下げたもの。
水準器よりも正確に垂直を測ることができる。
特に地墨を打つ際、柱が垂直であるかを確認する場合に使用。
7 セオドライト・トータルステーション セオドライト(トランシット)は角度を測定し、トータルステーションは、角度および距離を測定
特徴として、角度と距離を同時に測定でき、容易に平面的な位置を求めることが可能。
8 オートレベル・レーザーレベル 水平に調整する機能がある。
自動で本体側に水平をある程度調整する機能があるので、測定がスムースに行えるメリットがある。
9 レーザー墨出し器 レーザー光線を使って基準線となるラインを出したり距離を計測したりするため跡が残らない。
測定したい場所にレーザーを当てるだけなので、1人でも作業が可能。
日差しの強い屋外での利用には適さないが、効率的に墨出し作業をおこなえる。
10 水平器 地面に対して水平になっているかを確認する場合に使用。
レーザーを使用するものや気泡を使用するものなどさまざまな種類がある。
11 スケール(メジャー) サイズや距離などを計るためのもの。
12 差金(指矩) 両面にメモリーが記載されているL字型の定規。
大きさだけでなく、直角を確認するときにも使用。

墨出し作業の流れ

建築工事における墨出し作業の流れと作業内容を順番に示します。

順番 作業 内容
1 基本墨出し 下の階から順に通り芯やレベルを出す
2 型枠用小墨出し コンクリートの躯体となる位置を出す
3 型枠建込中の墨出し 設備用の箱・目地棒・アンカー・ルーフドレインなどの位置を出す
4 鉄骨アンカーボルト アンカーボルトのレベルや位置を出す
5 鉄骨歪直し 鉄骨の垂直度を測定
6 躯体工事中のその他墨出し カーテン壁、埋め込み金物などの位置、レベルを出す
7 仕上基準墨出し 壁芯の立ち上げ、陸墨や柱芯、外部角のタテ墨などを実施
8 仕上細部墨出し 金物取付用墨の墨出し、間仕切り墨、二重天井墨を行実施
9 設備関連墨出し 空調設備の取り付け用の墨出しや電動器具の取り付け位置を決める

墨出しの仕事のイメージ

建設現場で、専門的に墨出し作業を行う職人のことを「墨出し屋」あるいは「墨出し工」と言います。

墨出し職人の仕事は働く環境が過酷なので、どうしてもきつい職業というイメージがぬぐえません。

しかし、建設業界では、墨出し屋だけでなくあらゆる職種に共通するものなので、それを承知の上で目指すようにしましょう。

まとめ

この記事では墨出しについて詳しく解説してきました。

マンションの新築やリフォームなどの際、墨出しの作業を専門的に行う「墨出し職人は大変重要な役割を持つ職業ですが、特に特別な資格を持つ必要はありません。
希望すれば誰でも「墨出し工」を目指すことができます。

建設業界で活躍する人や建設業への就職をめざす人は、このチャンスに墨出しを行うのに必要な手順や工具などの基本的な知識を身に付けておくとよいでしょう。